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思い出せません。

「いぶちゃんが起きたから病院から帰れるの?」 「そうだぞ!長い間待ってたから良かったな大輝。」 「うん。嬉しいなぁ〜。いぶちゃんがまた一緒に居てくれる。」 蒼大も大輝も幸せそうに笑っているから僕と蒼大は仲直りしたんだよね。 でも覚えていないから胸がモヤモヤしてしまう。 「聖輝、だけどさっきまで大輝の事を大ちゃんて呼んでたのに・・・・・。」 「えっ?僕はずっと大輝って呼んでるでしょ?大ちゃんて小さい時にも呼ばなかったよ。」 どうして大ちゃんて呼んでたんだろう? 悠真と治樹君の家に居たからかな? 「聖輝、記憶・・・。」 事故後の記憶を失った事を蒼大に話した方が良いよね。 さっき迄、楽しそうに笑っていたのに重たい空気が漂っていて居心地が悪いよ。 「あのね。事故後の事を覚えてないんだ。僕が覚えているのは事故の日、蒼大を見つけて嬉しくなって横断歩道を渡りかけた時に車に引かれた所から何も分からないんだ。」 「聖輝、ちょっと先生呼ぶから待ってろよ。」 「うん。」 蒼大は、ゆっくりと立ち上がるとドアから出て行ってしまった。 ごめんね蒼大。 せっかく仲直りしてたみたいなのにまたあの日からやり直しだもんね。 「いぶちゃんは、事故の日に病院で僕と会ったのは覚えてないの?」 「大輝と会ったのは覚えてないんだ。ごめんね。」 僕は起き上がり側に立っている大輝を抱きしめた。 大輝は僕の腕をギュッと掴んできた。 「いいの僕は平気だよ。」 「ありがとう大輝。」 暫くしたら蒼大が先生と病室に入ってきて少しだけ質問をされたりした。 先生はまた何かの拍子に事故後の記憶が戻るかもしれないしそのまま戻らないかもしれないと言った。 様子をみておかしいと思ったら紹介してもらった病院で診察を受けるように言われ帰っても大丈夫ですと言われた。 でもさ今もかなりおかしく無いかな? モヤモヤしたけれど病院に長く居たく無いから蒼大に車椅子で正面玄関まで連れて行ってもらうと僕達はタクシーに乗り込みホテルへと向かった。

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