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見られたよ
「圭、悪いけど車まで付いて来てもらえるか?」
「オンブにしろお姫様抱っこにしろ手が塞がるからな蒼大。俺がドア開けるの手伝うよ。」
「悪いな圭。」
「蒼大の頼みだし聖輝も心配だから気にするなよ。」
圭がドアを開けて僕達の後を付いて来てくれている。
なんだか申し訳ない。
「中村副支配人。」
この声は山根さんだ。
もしかしてこっちに来るとか?
イヤイヤこの状況を見られるのは裸になるくらい恥ずかしい事なんだけれど僕。
「あっ・・・おっ・・・お疲れ様です。黒岡さん。」
「あはははっ・・・・お疲れ様です。山根さん。」
蒼大の肩越しに見えたのは圭の背後から現れた山根さんだった。
見ていいのか悪いのかと挙動不審になっている山根さんを見るとなんだか申し訳ない気持ちになった。
男が男にお姫様抱っこされてるなんてそりゃどういうリアクションしたら良いか分からないよね。
「聖輝、恥ずかしいか?」
耳元で囁かれて変な声を出しかけてしまった。
それは人前だから一応耐えたけれど家に帰ったらというか車に乗り込んだら仕返しでもしようかな?
「あの・・・・・。」
「山根さん、俺に用事かな?ちょっと聖輝を車まで運ぶの手伝ってくるからそれからでも良いかな?」
「はい。どうされたんですか?」
初めは戸惑っていた山根さんが冷静さを取り戻して圭に質問している。
圭に任せようと僕はそう思った。
僕が説明したら余計な事まで話してしまいそうだから説明とかが上手い圭に任せよう。
簡単に説明してくれて山根さんも僕の心配をしてくれた。
「ビックリさせてごめんね。また明日ね。山根さん。」
「はい。お大事になさって下さいね。」
山根さんはそう言うとフロアーに戻って行った。
蒼大を圭がルームメイトと紹介したのは胸がチクリと痛くなった。
本当は僕の大切な人なのにルームメイトと紹介をしないとダメだなんて・・・・・・・。
本当の事を言えば蒼大に迷惑が掛かるから仕方ないよね。
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