233 / 699
絵になる常連さん
蒼大が車から降りて暫くすると隣の空いている場所に1台の車が停車した。
他にもスペースあるのにとか思っていると助手席の窓をコンコンと叩く音が聞こえて来た。
何?
僕は音のする方を見るとそこにはカフェによく来て下さっていた常連さんが笑顔で立っていた。
その常連さんは僕があのカフェで働き出してからよく来てくださる様になったお客様だった。
前にも数回来て下さっていたらしいけれど僕が働き出してからは僕が休む日以外はカフェに足を運んで下さっている。
僕は慌てウィンドウを下げ挨拶をした。
「こんばんは、桧山(ひやま)さんご無沙汰しております。」
「こんばんは、黒岡さん。お怪我されたとかで大丈夫ですか?」
「ご心配お掛けしてすみません。今日から短時間ですがカフェの方に出勤しております。」
「そうでしたか黒岡さんがお怪我されてお休みだったので私も暫くカフェから遠のいておりました。明日はカフェにいらっしゃいますか?」
「はい。午後3時から午後6時ですが暫くは厨房なんです。」
「そうですか・・・・・。」
そう言って桧山さんは残念そうな表情をされてしまい常連のお客様には笑顔でいて欲しい本当に申し訳ない。
それにしても桧山さんは綺麗な顔立ちをされているので残念そうな表情をしても凄く絵になる。
「あっ、桧山さんはクッキーとかお好きでしたよね。」
「はい。甘い物には目がないです。」
僕は桧山さんに喜んでもらおうとカバンからラッピングされたクッキーを取り出した。
「良かったら久しぶりにクッキーを作ってみたんです。貰って頂けたら嬉しいです。」
「いいのですか?黒岡さんが作るクッキーは美味しいですからね。頂けるなら嬉しいです。ありがとうございます。」
僕が桧山さんにラッピングされたクッキーを手渡すとフワッと柔らかく笑って下さった。
先程の残念そうな表情が花が咲いたように明るくなる。
良かった桧山さんに喜んで貰えて嬉しい。
ともだちにシェアしよう!