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助かったの? 3

エレベーターが1階に着いてドアが開いた。 僕はまだ男に支えられながら歩いていたけれど目の前が涙で歪んで上手く歩けない。 「あきちゃんだぁ〜。」 あきちゃんと呼びながら僕に抱きついて纏わり付いてくる小さな男の子を僕は知っている。 でも男に知り合いだとバレたら大輝がどうなるかわからない。 僕は大輝に返事をせずに体も動かさない様にしていた。 「あきちゃんじゃ無くて、いぶきちゃんだよね?」 「お前誰からその名前聞いたんだ?」 男が大輝の言っている事に反応して大輝の肩を掴んだ。 お願いだから大輝には何もしないで下さい。 「航ちゃんが教えてくれたんだ。航ちゃんを知ってるでしょう?おじちゃん。」 航ちゃんと聞いて男の手が僕から離れたと同時に大輝の肩を掴んでいた手を離すとまるで怖い物を見たかの様に大輝から距離を取ろうとしている。 大輝が言っているあきちゃんは多分だけど桧山がずっと僕を亜樹と思い込んで呼んでいた名前だ。

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