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助かったの? 4

「おじちゃん。僕にいぶちゃんを返してよ。」 「なっ・・何を言ってるんだ!」 ヤバイ! この男が声を荒げると力加減しないで暴力を振るってくるから小さな大輝が殴られれば大怪我をしてしまう。 僕は無我夢中で男の手を振りほどいて大輝が殴られない様に僕の腕の中に隠した。 「何してるんだ。どけよ!」 「嫌だ!大輝には手を出させない。」 大輝だけは僕が守るんだ。 例え身体が切り裂かれようが大輝が無事に助かるまでは僕が盾になる。 「い・・・聖輝。」 男がいる方向とは逆の方から僕が会いたかった人の声が聞こえて来た。 ゆっくりと顔を上げて声が聞こえた方を見るとそこには蒼大が立っていた。 「うそ・・・蒼大・・・・・。」 蒼大に会えた。 嬉しくて涙が目から零れ落ちそうになった時に背中に激痛が走り息が上手くできなくなった。 あの男に背中を蹴られたんだと分かって痛みに耐えていると急に周りが騒がしくなったのだ。 「うわぁ〜ん!いぶちゃん。」 「大丈夫だから、泣かないで大輝。」 怖かったよね。 来てくれてありがとう大輝。 大輝が怪我をしなくて本当に良かったと思いながら泣きじゃくる大輝を抱きしめて落ち着かせる様に頭を撫でた。 蒼大が震える声で僕の名前を呼ぶのが聞こえた。 安心させなきゃと思いながら僕は笑ってみせたけれど夢じゃないかと疑いそうになるが泣きじゃくる大輝の体温がそれを夢じゃないと教えてくれていた。 僕は助かったの? また蒼大と大輝の側に行けるの?

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