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お声が出ないんだよ
少しだけ身体が強張るけれど僕の中では蒼大も大輝も大切な家族だと思っているが乱暴に抱かれた事で監禁されていた時の記憶が蘇ってきたのだ。
「聖輝、ダメなら触れない。」
『イヤだ!嫌だよ。僕は何をされても蒼大が好きなんだ。大好きなんだ。だから触れないなんて言わないでよ!』
声が出ないのを忘れて一生懸命に口をパクパクと動かすけれど蒼大には伝わらなくて涙がまたポロポロとこぼれ出す。
「聖輝、苦しいのか?ごめん。俺が悪いんだ。」
『違うよ!』
僕は首を左右に振って違うと伝えたけれど蒼大は今にも泣きそうな顔をして凄く苦しんでいるのが分かる。
「そうちゃん!僕がお部屋に戻ってる間にいぶちゃんをいじめたの?僕は怒るんだからね!」
「すまない大輝。それで手に何持ってるんだ?」
大輝はお気に入りの落書き帳とペンを胸に抱えていた。
「はい。いぶちゃんはお声でないからこれあげる。」
「はっ?大輝、何言ってんだよ。」
「いぶちゃんはお声が出ないんだよ。僕もビックリしちゃった。そうちゃんはいぶちゃんをいじめたらダメだからね。」
大輝・・・。
僕を気づかい蒼大が話をしたいと言ったから大好きなお気に入りのクマさんの絵が描いてある落書き帳を僕にくれようとしている。
ありがとう優しい大輝。
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