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おや?
会計を済ませて帰ろうとした時だった。
「おや?黒岡さんと宮垣さん。」
「星野(ほしの)先生。おはようございます。」
ロビーの所で白衣を着て颯爽と歩いて来る星野先生と出くわしたのだ。
僕は声が出ないから頭を下げた。
「その子が大輝君かな?足をどうかしたの?」
「俺の不注意で割れた皿の破片を踏んでしまったんです。」
『違うから!僕が止めれなかったんだよ。』
蒼大を見ながらそう口を動かしたけれどあまり早く口をパクパクしたから蒼大も僕の気持ちを読み取るとかできなかったが星野先生は読み取ってしまった。
「黒岡さん、落ち着いて下さい。ご自分を責めては良くありませんよ。」
「いぶちゃんもそうちゃんも悪くないもん。僕がそうちゃんに言われたのに動いたから僕が悪いんだもん。」
大輝は泣きそうになっていた。
僕が自分を責めているように大輝は大輝で自分が悪いと責めているんだ。
「聖輝も大輝も悪くない。皿が割れる原因を作ったのは俺だ。」
「黒岡さんと宮垣さん。それに大輝君もあまりご自分を責めてはいけませんよ。お2人がご自分を責めていると大輝君はそれ以上に自分が悪いと思うのではないですか?」
怪我をした大輝が一番辛いよね。
僕は先生に言われて大輝が大人しいのは足が痛いからだと思っていたが大輝は自分が悪いからと思い落ちこんでるんだ。
それは蒼大も思ったみたいで星野先生に頭を下げた。
「すみません。ありがとうございます。」
「気づかれたなら良いですよ。僕はもう行かないとそれではまた診察の時にお会いしましょう。」
星野先生は柔らかく笑うと足早に診察室がある方へ消えて行ったのだ。
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