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ホワイトデー 5

「うおほっん!」 わざとらしい咳払いで一気に2人の世界から引き戻された。 忘れていた。 淳平君と拓人さんが向かいのソファに座っていて淳平君の隣には大輝も居たのだ。 慌てて蒼大から離れようとしたが蒼大は気にもしないという感じでまだ僕を腕の中で抱きしめている。 「ダメだよ。みんながいるから離してよ。大輝だって見てるよ。蒼大!」 「大丈夫だ。」 「何がだよ。大丈夫な訳ないよ蒼大。」 蒼大の腕の中でもがきながら大輝の方に視線だけを向けるとニヤリと笑う淳平君の膝の上で大輝は淳平君の手で目隠されていた。 「いい加減にしろよ。とっさに抱き上げて目隠ししたんだからな蒼大。2人の世界から早く戻って来やがれ!」 「じゅんちゃん。いぶちゃんのお声が聞こえるよ。」 「聖輝君はお声が出るようになったんだ。良かったな大ちゃん。」 「ほんとう!いぶちゃんとお話ししたいからじゅんちゃん手をのけてよ。」 「もう少しだけ待っててくれるか?」 「いぶちゃん、どこにいるの?」 今にも泣きそうな声で僕を呼ぶ大輝に蒼大は抱きしめていた腕を緩めた。 皆んなは大輝の泣きには弱いのだ。 僕は立ち上がり急いで大輝のそばまで行くと大輝も淳平君から解放されて僕の側まで来ると腰に抱きつき見上げながら涙目で笑ったのだ。

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