535 / 699

ホワイトデー 14

店員さんが奥から何か手に持って此方へと向かって来るのが分かったから僕は蒼大から手を離そうとするとギュッと握りしめられた。 「蒼大、離してよ。」 「嫌だ。」 「店員さんが来ちゃうよ。」 蒼大は僕の顔を見て優しく微笑むだけで手を離してはくれなかった。 店員さんは僕達の前に座るとニッコリと笑っていた。 「宮垣様、此方がお品になります。」 「無理言ってすみませんでした。」 「お品が間に合って良かったです。」 目の前に置かれていたのはシルバーのリングだった。 「おっしゃられてましたサイズで大丈夫でしょうか?ご確認下さい。」 「はい。」 蒼大はシルバーのリングを一つ取り握りしめていた僕の左手を持ち上げてその手の薬指にシルバーリングをゆっくりと嵌めていった。 「痛くないか聖輝。」 「あっ、うん。」 「よくお似合いですよ。」 「ありがとうございます。」 頭の中が真っ白でか聞かれた質問にしか答えれなくて目の前の出来事について行けてなかった。 シルバーリング? 左手の薬指? 蒼大も同じデザインのリングを嵌めた。 「あっ!えっ?これ!」 ようやく何が手に嵌められているか理解した。 指輪!! 「大きな声出したらビックリするんだけど聖輝。」 「宮垣様、お話されていらっしゃらなかったのですか?」 「はい。ビックリさせたくて秘密にしてました。」 「それでは驚かれますね。」 言葉にならなくて僕はコクコクと頷いた。 「結婚指輪。」 「うん。」 「形にしたかったんだ。黙っててゴメン。」 「うん。」 僕は左手の薬指に嵌められている指輪を眺めながら蒼大の言っていることに返事をしていた。 「明日は雨だって聖輝。」 「うん。」 「犬が吠えてるよ。」 「うん。」 「愛してる聖輝。」 「う・・・へっ?あっ、蒼大。僕・・どうし・・ウゥッ・・・。」 嬉しすぎて僕は左手を胸の辺りで握り締めながら泣き出しまった。 蒼大も泣くとは思っていなかったみたいで慌て僕を抱きしめると何度も何度も謝って泣き止むまで背中を優しく撫でてくれていた。

ともだちにシェアしよう!