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「永翔」 波星は可愛い。 いや、世間一般から見たら全く可愛くは無く男前な美形なのだが、言動全てが可愛いのだ。 嬉しそうに呼ぶ声は甘さを含み、物腰も柔らかで、そして何より優しい。 俺は俺だけに従順で俺の言う事のみ聞く波星が可愛くて堪らない。 たがそんな態度を取ったらコイツは絶対図に乗る。 そうなるのが分かっている為、俺は波星には冷たい態度しか見せない。 「何ですか?先輩」 再会した時が学校の先輩後輩の関係だった為、俺は波星を先輩と呼ぶ。 ニコニコ嬉しそうな顔をしながら俺を見る波星。 思わず頭を撫でくり回したくなる衝動を堪えながら 「用がないなら行きますよ?」 目線を逸らし素通りした。 ふわり。 あっ、また香った。 通り過ぎる瞬間鼻に入る甘い匂い。 波星の匂いは大好きだ。 いつまでも嗅いでいたい。ずっと側に居たい。離れたくない。そう身体が求めてしまう。 「永翔」 呼ばれ振り向いてしまうのは抗えない性。 「…………まだ…何か用ですか?」 素っ気なく突き放したにも関わらず 「今日も1日頑張ってね?」 柔らかな笑みを向けてくれる。 緩みそうになる頬に力を入れ 「誰に物を言ってるんですか?」 冷たい侮蔑の眼差しを向けて側を離れた。 実際には存在しないのだが、波星には犬耳と尻尾が着いている様に見える。 今はどうだろうか? しょげてるか? チラリ一瞬背後に目線を送ったが、波星は普段通りニコニコと俺を見ていた。 いつも思うのだが波星は鈍感なのだろうか。 俺がどんなに冷たい態度を向けても怒らない。 突き放したり無視したり罵声を上げたり無理難題を突き付けたりと数え切れない位色々酷い仕打ちをしているのに全て受け入れて微笑んでくれる。 Mなのか寛容なのか心が広いのか、謎だ。

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