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devil 2
美しい王子と醜い悪魔の二人組は、すぐに国中で噂になりました。とてもアンバランスなペアだったからです。
悪魔はまるで最初から王子と親しい間柄であったかのように振る舞いますが、誰一人として疑問に思っても尋ねてくる者はいませんでした。これも悪魔が仕組んだことなのかもしれません。
しかし王子は、悪魔の醜い姿に眉をしかめ、その姿はどうにかならないのかと尋ねたことがあります。すると悪魔は、
「私は確かに、自分の好きな姿になることができます。ですが、私がこんな成りをしていれば、あなたがより引き立つでしょう?」
と何でもないことのように言ってのけました。その言葉に納得した王子ですが、最初の頃と違っていやに丁寧な口調にはなかなか慣れませんでした。悪魔は、王子に付き従う従者に成り済ますつもりなのです。
「そうだ、私の名前は貴方がつけてください。悪魔なんて呼ばれたら、騒ぎになりかねませんからね」
ふと悪魔が思いついて口にすると、王子は少し考える素振りをしました。
「わかった、お前のことはダークと名付けよう。デビルではそのままだから、闇という意味だ」
王子の提案に、悪魔は首を振り、
「いいえ、できれば貴方のお名前の一つをください。契約ではそういう決まりなのです」
表情を消しているせいか、悪魔の考えが少しも読めません。王子は少し引っ掛かりを覚えましたが、
「じゃあ僕の名前がリアムだから、お前はリチャードと名乗れ」
「かしこまりました」
悪魔、改めリチャードは恭しく頭を垂れて見せました。
リアム王子とリチャードが契約を交わして、しばらく経った頃のことです。
リアム王子は、父親である国王にある女性を紹介されました。相手は敵国の姫君で、国を侵略されたくなければ息子であるリアム王子を差し出すように言われたと、打ち明けられました。
「その方の写真を見せてくれますか。僕は顔も知らない相手と結婚するのはごめんです」
リアム王子が国王に言うと、一枚の写真を渡されます。見ると、特になんの特徴もない、甲乙つけがたい女性が微笑んでいました。
リアムは内心、こんな女と結婚するくらいならば、国を侵略された方がましだと思います。
父親にはそれを悟られないように、
「少し、僕にも時間をくれませんか」
と言いましたが。
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