4 / 12
devil 4
ローズ姫の婚約者が亡くなったという話は、まもなく風の便りでリアムの元にも知らされました。
詳しいことは聞かされませんでしたが、見るも無惨な状態で発見されたということでした。ローズ姫の美しさはどこの国でも噂されていましたから、婚約者を妬んだ誰かの仕業、ということにされたようです。
それからしばらくして、ローズ姫とその父親がリアムの国に訪れました。ローズ姫はうちひしがれて、両目を真っ赤に充血させています。
「気晴らしになるかと思って連れてきたのですが、まだ立ち直るには時間が必要なようです。リアム王子のことは娘もよく知ってますし、娘と話でもしてもらってもいいですか?」
願ってもないことに、リアム王子はすぐに了承し、ローズ姫と薔薇の庭園へ向かいました。その後ろから、影のようにこっそりとリチャードもついていきます。
「この度は、誠に……」
リアム王子がお悔やみの言葉をかけようとすると、ローズ姫は首を振って遮りました。
「いいえ、こんなにいつまでもくよくよしていては、亡くなったあの人も浮かばれないわ。それに、今は違うことを話したいの」
気丈に振る舞って見せながらも、その瞳は悲しみで揺れています。大切な人の死が、皮肉にも彼女の美しさに磨きをかけているようでした。そんな彼女の様子に、リアム王子は背中に痺れるものを感じます。
「では、せっかくですから、貴女と同じ名前のこの薔薇の庭園を案内しましょう」
「それは楽しみね。私、薔薇が大好きなの」
リアム王子と話ながら、ローズ姫の表情にも次第に明るさが戻っていくようでした。
その二人の様子を、影から見ていたリチャードが、強く歯噛みしていたことなど気づきもせずに。
ともだちにシェアしよう!