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テストも終わり残すイベントは終業式のみとなった。
夏休み目前ということで心なしか生徒たちは浮き足立っている。
今は、2学期はじめにある大イベント(?)の文化祭の出し物について話し合いが行われていた。
『 はーい。おれ執事・メイド喫茶やりたいー。男がメイドで女子が執事やったらおもろくね?』
日焼けで真っ黒になった小谷が案を出す。
明里は小谷に比べるとイベント事には消極的なので頬杖をついてなんとなく聞き流していた。
( え。田中の女装とか絶対超可愛いじゃん。)
( あたし田中くんにメイクしてみたかったんだよね。)
クラスの半数以上が小谷の案に賛成していた。
『 おれ裁縫とか得意だし衣装作れるよ。』
小谷は腰に手を当てて、ドヤ顔で言った。
『小谷かっけ〜』
『任せたぞ〜はる!』
クラスメイトからは茶化すような声が上がる。
しかし小谷は満更でもない顔をしている。
( そういえば小谷の家金持ちで、小さい頃から裁縫とか英会話とかやらされてたって言ってたな…… )
1年のとき小谷が明里にくれた黒猫のマスコットは既製品かと思うほど完成度が高かった。
昔の記憶を懐古しているといつのまにか話し合いは終わっていた。
放課後になってカバンを肩にかけた時、小谷がおれの席に来た。
すると小谷は申し訳なさそうな顔で頭を下げた。
『 明日から衣装作製はじめるからおれん家着て手伝ってよ〜。2人の方が捗るし、試着もして欲しいし。お願い!』
『 いやいやいやいや、おれが裁縫苦手なの知ってるだろ。
ほかのやつに頼めよ。足ひっぱるだけだって。』
『 明里しか頼める人いないんだよ〜お願い!明里様!一緒にやろうよ〜!』
小谷がおれの手を掴んでキラキラとした目でこちらを見つめてきた。
(うっ……そんな捨てられた犬みたいな目でみるなよ……揺らぐ……)
『 わかったよ……ほんとに役に立たないと思うけどやるよ。』
小谷の無い尻尾がブンブンと動いて見えた。
『明里様ありがとう!さすが!ヨッ!優男!』
おれは小谷が茶化す声を無視して教室を出ると、
小谷は泣き真似をしながらついてきた。
2人で手芸屋に行き材料を買って、小谷の家に向かった。
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