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『 なに?龍司さんと知り合いだったの?』
『 知り合いなわけないだろ。今さっき初めて会ったんだよ。ほんとは会いたくなかったけどな!』
明里は先ほどのことを思い出してイライラしている。
部屋に行こうとしたけどわからなかったことを小谷に伝えると
何故か笑われてしまった。
部屋に案内してもらい、
すぐに買って来たものを机に広げて作業を始めた。
主に明里がデザインを考えたり試着をして、
本格的な裁縫は小谷がすることになった。
明里は新品のノートを広げて
衣装のデザインを考えていた。
メイド服はミニスカートの
アメリカンダイナー風(明里の趣味)で、
執事服は某執事漫画の服を真似することにした。
( メイド服おれの好きな感じに可愛くできた。
ほんとは女子に着てもらいたいのに、
男共が着んのか…なんか…)
明里は自分が書いたデザインを見ながら
男の生足を想像してしまい、テンションが下がっていた。
『 龍司さんとなに話してたの?
あの人が他人とあんなに笑って話すのってなかなかないよ。』
小谷は不思議そうな顔をしている。
『 そんなわけない。
おれ最初から最後までずっと笑われてたんだけど! 』
『 いや、珍しいと思うよ。
大学時代も結構モテてたらしいけど
誰も相手にしてなかったみたいだし。
おれも親父の仕事の関係で昔から知り合いだけど、
ふつうに話すのにも時間かかったもん。 』
( あんなやつがモテるとかありえねー!
よっぽどおれの方が性格いいと思うし(?)
顔がよけりゃいいのかよ。
なんて世の中だ… )
明里は相槌を打っているが、
心の中ではまったく納得がいっていなかった。
おれのデザインが出来上がり、
小谷が作業に入ってしばらくしたところで休憩にすることにした。
小谷に出してもらった紅茶を飲みすぎてしまって、
明里はトイレに行こうとしていた。
はずだったが、小谷の広い家は明里にとっては
トイレを見つけるのも難しかった。
( やっぱり小谷について来て貰えばよかった… )
明里は17年間生きて来て初めて
自分が結構方向音痴だということを知った。
『 うろうろしてたら、小谷の部屋も分からなくなった…。
スマホ持って来ればよかった…』
家の中でスマホで迷子の助けを求めるのもどうかと思うが。
そんなことを忘れるぐらい小谷の家は広い。
明里は廊下の真ん中で項垂れていた。
『 邪魔だ。道を塞ぐな、どけ。』
明里の前には明里が今1番嫌いな人間が立っていた。
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