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8 『 なに?龍司さんと知り合いだったの?』 『 知り合いなわけないだろ。今さっき初めて会ったんだよ。ほんとは会いたくなかったけどな!』 明里は先ほどのことを思い出してイライラしている。 部屋に行こうとしたけどわからなかったことを小谷に伝えると 何故か笑われてしまった。 部屋に案内してもらい、 すぐに買って来たものを机に広げて作業を始めた。 主に明里がデザインを考えたり試着をして、 本格的な裁縫は小谷がすることになった。 明里は新品のノートを広げて 衣装のデザインを考えていた。 メイド服はミニスカートの アメリカンダイナー風(明里の趣味)で、 執事服は某執事漫画の服を真似することにした。 ( メイド服おれの好きな感じに可愛くできた。 ほんとは女子に着てもらいたいのに、 男共が着んのか…なんか…) 明里は自分が書いたデザインを見ながら 男の生足を想像してしまい、テンションが下がっていた。 『 龍司さんとなに話してたの? あの人が他人とあんなに笑って話すのってなかなかないよ。』 小谷は不思議そうな顔をしている。 『 そんなわけない。 おれ最初から最後までずっと笑われてたんだけど! 』 『 いや、珍しいと思うよ。 大学時代も結構モテてたらしいけど 誰も相手にしてなかったみたいだし。 おれも親父の仕事の関係で昔から知り合いだけど、 ふつうに話すのにも時間かかったもん。 』 ( あんなやつがモテるとかありえねー! よっぽどおれの方が性格いいと思うし(?) 顔がよけりゃいいのかよ。 なんて世の中だ… ) 明里は相槌を打っているが、 心の中ではまったく納得がいっていなかった。 おれのデザインが出来上がり、 小谷が作業に入ってしばらくしたところで休憩にすることにした。 小谷に出してもらった紅茶を飲みすぎてしまって、 明里はトイレに行こうとしていた。 はずだったが、小谷の広い家は明里にとっては トイレを見つけるのも難しかった。 ( やっぱり小谷について来て貰えばよかった… ) 明里は17年間生きて来て初めて 自分が結構方向音痴だということを知った。 『 うろうろしてたら、小谷の部屋も分からなくなった…。 スマホ持って来ればよかった…』 家の中でスマホで迷子の助けを求めるのもどうかと思うが。 そんなことを忘れるぐらい小谷の家は広い。 明里は廊下の真ん中で項垂れていた。 『 邪魔だ。道を塞ぐな、どけ。』 明里の前には明里が今1番嫌いな人間が立っていた。

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