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10 はい? 明里はまったく理解ができなかった。 『 冗談でしょ?おれは男だってずっと言ってるだろ。そういう冗談は好きじゃない。』 明里は真面目な顔で言うが、龍司もまた真剣な顔で答えた。 『 冗談でこんなこと言うわけない。お前が男だと言うことも理解している。』 ( え。じゃあつまり俗に言うゲイとかホモとか言うやつなのか… ) 明里は戸惑った表情で後ずさってしまう。 それを見た龍司は無言のまま家の奥に歩いて言ってしまった。 『 え。ちょ…どこ行くの? 』 明里はただ廊下で呆然と立ち尽くしていた。 (この時に逃げればよかったと後に後悔する。) しばらくして龍司は戻ってきた。 龍司の手にはブランド物のバッグのほかに見覚えのある学生鞄が見えた。 持ち手の部分には小谷から貰った手作りの黒猫のマスコットがぶら下がっている。 龍司は明里の手を掴み、サッサと玄関へと向かう。 『 なんで俺の鞄…。ちょ…無理だって言ってるだろ! 』 明里は非力なりに龍司に掴まれている手を引っ張って離そうとするが、ビクともしない。 ( なんで無言なんだよ…こんなん拉致と同じじゃん。 こう言う時って大声出したらいいのか? ) 明里が助けを呼ぼうと叫ぼうとした時、 明里の手を引く龍司はこちらを振り返り微笑んだ。 『 小谷の息子にはお前を拝借すると伝えてある。叫んでも無駄だ。 』 目の前の笑う男と対に明里は泣きそうになっていた。 ( いや、小谷も友達なら引き止めろよ!ああ、 これもうだめなんだ。おれの貞操は奪われた…。お尻守れなかったよ。今までありがとう姉ちゃん… ) 明里は手を龍司に引かれるままに小谷邸の外へと出た。 龍司は鞄の中から車のキーを取り出し、外に停められていた これまた高そうな外車のドアを開けた。 『 後ろに乗れ。』 明里はすでに抵抗する気も無くなっていたので、 龍司の言葉に従った。

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