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13 明里の心音が激しくなる。 体温が急激に上がっている気がした。 沈黙が辛くなり目をギュッと瞑る。 ( 恥ずかしすぎる…。こんなこと今まで言ったことないし、らしくない。聞かなきゃよかった…。) 龍司は明里の問いかけに少し驚いたような顔をしたが、 優しく笑って言った。 『 お前は覚えてないと思うが、 明里に惚れたのは、本当は今日じゃないんだ。』 瞑っていた目を見開く。 明里は予想外の事実に驚きを隠せないでいた。 『 えっ!?おれたち今までに会ったことあったっけ……? 』 龍司は明里の正直な言葉に少し傷ついたような顔をしたが、すぐに真剣な表情になった。 『 明里が1年前に一度小谷邸に来た事があるって言っていただろ。その時に俺もあの家に俺が次期社長だという挨拶に来ていたんだ。』 高校生になり、明里は小谷と知り合ってすぐの頃。共通の趣味であるバンドのライブDVDを見せてくれるというので小谷の家に訪れた事があったのだ。 『 本当は大学を出てすぐに渡英して、祖母の家からイギリスの大学院に通いたかったんだ。 だけど父親に会社を継げと言われて、小谷の家に挨拶に行くことになった。 その時にお前があの家の廊下を小谷の息子に連れられ歩く姿を見かけたんだ。』 龍司は大学卒業後、夢だった渡英を父親に猛反対され、自棄になって夜な夜な色々な女と遊びまわっていたという。 龍司は哀しげな、どこか懐かしむような表情で続けた。 『 あの時のお前はとにかく美しくて、儚い雰囲気を纏っていた。遂にはお前があのまま消えてなくなるのではないかと心配になるくらいに。俺は初めて誰かを守ってやりたいと思ったんだ。』 龍司はその後、日本に残り父親の会社を継ぐ事を決め、明里にいつか会える日を待った。 しかし敢えて小谷から明里の事を聞き出すことはしなかった。 酒と女に溺れている状態で美しい明里に関わりたくなかったのだ。 龍司は予想外のプロポーズ同然の言葉に顔を赤らめて戸惑う明里を見て、不敵な笑みを浮かべた。 『 1年越しでやっとお前に会えたんだ。返事はまだ要らない。必ず俺に惚れさせるから覚悟しておけ。』 『 もういっぱいいっぱいだって……!おれ恋とか好きとかまだわかんないから……。』 明里は両腕で赤くなった顔を隠した。 ( こういうのマジで慣れてないし…。龍司さん…恥ずかしいからあんまり言いたくないけどちょっとカッコいいな……。) 『 さっき『それなりに経験がある』などとほざいていたのは誰だ? 』 『 …………!!!なんでちゃんと覚えてんだよ!!ばか!そういうのは思ってても言わないお約束だろ! 』 『 明里の言った事は一語一句全部覚えていたい。』 そう言いながら龍司は明里の服の中に手を入れて背中を撫でた。 『 やめろくすぐったいし、キモいし恥ずかしいから!!! 』 ( なんかこいつ、全部話せたからってオープンになりすぎじゃないか……? ) 明里はそう怒りながらも実はちょっと喜んでいたことは龍司には一生言わない。

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