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『 ていうかおれ小谷の家からそのまま来たし、着替えとか用意とか何も持ってきてないんだけど。』
半ば無理矢理、学校帰りの制服姿で連れてこられた明里の制鞄には学校で使うものしか入っていなかった。
『 全てこっちで用意してある。なにも心配は要らない。 』
龍司はさも当然かのように答え、生活感があまり感じられないアイランドキッチンの向かい側にある部屋のドアを開けた。
そこには黒と白で統一されたリビングとは違って、スカイブルーを基調としたインテリアで統一された部屋だった。
また部屋の奥にあるベッドには、明里が制鞄につけている黒猫のマスコットに似ている黒猫のぬいぐるみが枕元にちょこんと座っていた。
明里は部屋に入り大きなクローゼットを開けるとどこで知られたのか、明里サイズのブランド物の洋服がずらりと並んでいた。
『 なんで……。色々言いたいことはあるけど、ここっておれの部屋ってこと?? 』
『 そうだ。全てお前のために用意させた。本当は俺の部屋で俺のベッドで一緒に寝たいところだが、お前のプライベートを優先してやりたいと思ってな。』
『 ………いや。こんないい部屋使えないよ。おれなんかソファとか、いやソファでも充分すぎるくらいだし……。
服もこんなにもらえない。せっかく用意してくれたのに申し訳ないけど、やっぱりおれ一回うちに帰って用意してくるから。』
明里が部屋を出ようとすると、部屋の壁にもたれかかって腕を組んでいた龍司に手を引かれた。
そして気づくと、明里の唇に柔らかくて温かいものが触れていた。キスされたのだ。
明里にとってはじめてのキスは優しくて苦くて、少し煙草の味がしていた。
『 …え、え。なんでっ……。きききききききす、なんっか……。おれはじめ、て…だったんだ……けど…。』
明里は全身が熱くなっていくのを感じた。
恥ずかしさで龍司の顔を直視できなかった。
『 これは俺がやりたくてやったんだ。俺はお前が望むことならなんでもしてやりたいし、優しくしたい。お前は俺に愛されていることを覚えろ。そして早く俺に溺れろ。』
龍司は明里の頬を大きくて骨張った両手で掴んで無理矢理正面を向かせた。
明里は目の前の綺麗な青い瞳にくらくらとしてしまい、なにも考えられなくなっていた。
『 蕩けた顔も可愛いが。明里、返事は? 』
青い瞳は細められて綺麗な白い歯が見えた。
龍司は明里を見つめて愛おしそうに笑った。
数秒後、
明里の恥ずかしさで上擦った返事が部屋に響いていた。
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