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16 龍司宅での初夜(別々の部屋で寝ただけ)を乗り越え、次の日明里は終業式のために学校に来ていた。 案の定教室に入るとすぐに小谷が駆け寄って来た。 『 もー嘘つくなんて酷いよ明里たん!龍司さんと知り合いってなんで教えてくれなかったのー!しかもトイレ行ったっきり帰っちゃうし…。』 小谷は一人で泣き真似をしながらギャーギャー暴れている。 ( そうだった…。昨日あのまま小谷に会えずに帰ったんだった…知り合いってことになってんだな…。話し合わせといたほうがいいよな。) 『 悪かったって。久しぶりに会ったから顔忘れてて、知り合いじゃないとか言っちゃったけど…えっと……あれ!おれの姉ちゃんの友達の友達で……色々あって夏休み中泊まらせてもらうことになったんだ……。』 明里は適当に龍司の話に合わせてごまかした。 『 えー!!泊まるほど仲よかったんだ。てか、明里って姉ちゃんいたの?初めて聞いた!明里自分のことなかなか話してくれないからなあ…。』 『 っ……いるよ。一応ね……。もう担任くるから!行こうぜ。』 明里は無理やり話を終わらせた。 そして小谷の背中を押して、席に着いた。 明里は、明里と明里の姉が腹違いだとか自分が父親の浮気相手の子だとかネグレクト、虐待されていただとかあまり人には言わないようにしていた。 誰かに相談したり話したりしても過去は変えられないし、 明里は誰かに話してどう思われるかの方が怖かった。 姉にしてもらった感謝だけを覚えておいて、 あとは奥底に仕舞い込んで誰にも知られずに生きていたいと思っていた。 だから今まで不意に思い出してどうしようもなく苦しくなっても自分の中で無理やり押し殺して忘れるようにして来たのだ。 ( こんなの弱い故の強がりでしかないのに…。でも笑ってたほうが楽だよな。) 気づいたら朝礼は終わっていた。 生徒はぞろぞろと体育館に移動しているところだった。 『 おーい、明里〜?移動するって。顔色悪いけど大丈夫か?』 『 ……!大丈夫だっつーのっ!いつも通り寝不足なだけだって!お前こそノロノロしてると置いてくからな! 』 明里は空元気で笑顔を作り、立ち上がった。 ( あ〜、おれちゃんと笑えてっかな…。) 『 明里!……なんかあったら言えよ。なんも力になれねえかもだけど…。友達としてお前のこと大好きだから。』 小谷は日に焼けた黒い顔に、白い歯を見せてニカッと笑った。 ( ……こいつはこう言う奴だよな…。だから一緒にいて心地いい。お前はいてくれるだけで助かってるよ。ぜってー言わないけど。) 『 じゃあ大好きなおれのために、めっちゃいい感じの圧力鍋買って。 』 『 んも〜、明里ちゃんはお金がかかる子ねえ…。仕方ないな〜……ってなるわけ無いでしょ!なんかあったらってそういうことじゃ無いからね!? 』 明里は小谷とこうやって話している時間がなにより好きだった。 2人は談笑しながら体育館に向かった。

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