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第3話

*** 点滅する信号機、せわしない車の騒音、そして言い争う声……… 水中から地上のそんな様子を眺めている。 言い争いをしているのは2人の若い男だった。 重苦しい雰囲気の2人を周囲の人々は遠巻きにしている。 「兄さん、僕はーーーーーーーー」 若い男の1人が相手に向かって何か怒鳴るとその場から駆け出した。 残された男はその言葉に驚き固まっていたが、はっとしてすぐに追いかけた。 駆け出した男は、そのまま道路に飛び出すかたちとなり、そこには大型トラックが猛スピードで近づいていた。 『ーーーー危ない!』 水中でそう叫んだ。 届かないその言葉を叫ばずにはいられなかった。 地上の男も同じ言葉を叫んでいただろう。 しかし、その警告はもはや遅く、男の目の前までトラックは迫って来ていて……… *** 「っ!………はぁっ……はぁ……」 がばっと起き上がった海斗が、ここが病室だと理解するのに少し時間がかかる。 青い顔をして息を切らせながら、頬には汗をつたらせていた。 汗はそこだけに収まらず全身をぐっしょりと濡らし、不快感を生み出している。 最近よく、いや、眠るたびには必ず同じ悪夢を見る。予知夢とか呪いとかそんなものではなく、それを見る原因はわかっている。 それは、海斗自身が経験したことを忘れられずにいるからだと。 少し前、海斗は交通事故にあった。 それにより、右腕を骨折する大怪我をした。 そして……… 双子の弟を失った。

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