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第4話
海斗には双子の弟、橋本空斗がいた。
一卵性双生児ではなかったものの、そっくりな見た目で両親さえもよく見間違えるほどだった。
その容姿でちょっとしたいたずらや人を欺したりして2人で遊んだりしていた。
仲も良く、どこに行くのも一緒で同じことばかりしていた2人はそのまま似たような2人に育っていくのだろうと自他共に。
そう思っていた。
............あの検査の結果が出るまでは。
精通が終わって2週間たつと、第2の性別を判明できる検査がある。
α同士の両親から生まれた子供はαになる確率は高い。βになったり、ましてやΩになるということはほとんどない。
だから、2人は周囲が自分の性別は何か、とそわそわしている時も我関せずといった風だった。
だって、αになって当たり前なのだから。
しかし運命とは残酷なもので.........その予想はあっさりと裏切られた。
兄の海斗はα、弟の空斗はΩという結果だったのだ。
そのときから、まるで2人で一つのようだった2人は別々に行動することが多くなり、互いに避け合うようになっていった。
海斗はα同士能力の高い者たちと付き合うようになり、空斗は人と関わるのをやめ孤立した。
空斗はΩの特徴であるフェロモンや発情期に悩まされ、学校を休むことも多くなった。
そんな風に生活が態度が対象的な2人は見た目も変わり、海斗は活発的で髪も染めて今時の若者らしく、空斗は眼鏡を掛けて顔を隠すように前髪を長く伸ばし消極的に。
もはや誰も2人のことをそっくりな双子だとは思わなくなった。
時は流れ、2人が付属の同じ大学に進学し一ヶ月ほどたった頃、事は起こった。
突然、空斗が大学を辞めると言い出したのだ。
そのことで2人は口論となり、そして............あの事故が起こった。
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