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第8話

あの日、目の前に迫ってくるトラックに空斗は動けなくなった。 『兄さん、僕はあんたのただの片割れじゃない!一人の人間なんだ!自分の人生は自分で決める!』 空斗は海斗にそんなことを言って飛び出してきた。 空斗は自分がΩだと分かってから何に対しても自信をなくしていた。 だが、未来になんの光も見出せなかった日常に光を見つけた。 それはずっと近くにあったものなので見つけたというよりも気づいたという方がいいかもしれない。 好きな人を見つけた。 空斗は自分が拓也を好きなことに気づいた。 そして、その人のためになるように生きていこうと決めた。 自分がそんな分不相応なことを思ったから罰が下ったのだろうか。 空斗は死を覚悟して目をつむった。 しかし、その瞬間………急に腕を引っ張られ、空斗は迫り来るトラックの前から抜け出していた。 そして、空斗が先ほどまでいた死に場所に海斗がいた。 道路で棒立ちになっている空斗引っ張った海斗はその反動で自らが道路に飛び出してしまったのだ。 目を開いた空斗の視界にはそんな光景が広がっていた。 そのすぐ後に起こったことはあまり覚えておらず、ただ目の前が赤く染まったように空斗は記憶していた。 重傷を負った海斗はすぐさま病院に緊急搬送されたが治療の甲斐なく息を引き取った。 その交通事故で空斗もトラックに少しかすり右腕を骨折していたので同じ病院で治療を受けていた。 そこに両親が駆けつけたが、海斗が亡くなったことに双子の母親は酷く動揺していて空斗に残酷なことを言ったのだ。 海斗じゃなくてあなたが死ねば良かったのに ………と。 その言葉を聞いた空斗はショックで失神し、次に目を覚ました時、自分のことを海斗だと言い出したのだった。

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