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本編 20
○春のマンション・玄関
春:「お客さんだよ。具合が悪くなった俺を送って来てくれたんだ。」
輝一M:(春を指名して来た奴か。)
作り笑顔で名刺を差し出す輝一。
輝一:「大変失礼致しました。初めまして、福本輝一と申します。」
貴臣:「…初めまして、広瀬貴臣です。」
輝一:「ウチの春を送って下さりありがとうございます。後は私に任せてお引き取りを。」
丁寧な言の葉だが、有無を言わさぬ雰囲気を匂わす輝一。
二人の間に流れる冷ややかな空気を察し、割り入る春。
春:「今日はありがとう。」
貴臣:「…具合が悪くなったら直ぐに電話して来いよ。」
春の頬をそっと撫でる貴臣。
左耳ヘリックス部分のピアスに目を留め、輝一の眉がピクリと上がる。
輝一:(春とお揃いのピアス…まさか…此奴が?)
貴臣:「では、此れで失礼します。春を宜しくお願いします。」
輝一へ軽く会釈をし、出て行く貴臣。
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