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第3話・翌日
◆
翌日の午前。
市野 綾人 は、一限目の経営科学に寝坊してしまい、途中から出席する羽目になった。
それもこれも、昨日、自分が凌雅 におかしな質問をしたのが原因だ。
おかげで綾人は溜まっていた凌雅への欲求を解消しなければならない。
綾人はいつものごとく、行きつけのバーで凌雅に似ている部分を少しでも持った男を引っかけ、午後十一時という門限ぎりぎりまで抱かれた。
その結果、帰宅は門限を過ぎ、両親からこっぴどく怒られ、綾人は抱かれた身体が気怠いやら眠たいやらといった先日の反動で朝寝坊し、一限目を遅刻した。
もちろん、綾人は自分の性癖を両親に打ち明けていない。
だから当然、大学を終えた後、『EN-COUNTER』に立ち寄り、同性に抱かれていることも知らない。
両親には大学の友人との付き合いだと話している。
門限ぎりぎりで帰宅するたび、毎回両親に言い訳をする嘘が後ろめたい。
両親にはいつか、自分の愚行を知られる日が来るだろう。
そんな危険を冒してまで凌雅を想い続けていたのだが、講義に遅刻してしまってはせっかく凌雅と口をきけるチャンスが水の泡だ。
彼と同じ大学を選んだ意味がない。
それでもーーと、綾人は未練がましく二、三列前に座っている凌雅の後ろ姿を見つけ、凛々しい彼を見つめた。
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