13 / 41

第3話・拘束

「家庭教師の……バイトの帰り道で見かけた。そっか、やっぱ、お前だったのか……」  凌雅の表情に影が宿る。  彼は長机の上に綾人の身体を押し倒した。  室内には机が引きずられる大きな音が響く。しかしその音さえも、今の綾人には小さく聞こえた。  頭の中で大きく響いているのは、綾人を非難する凌雅の声だ。 「……っつ」  自分がゲイだということを知られた。  誰にでも身体を開く、不埒な奴だと軽蔑された。  恐れていたことが実際に起こってしまった。  好きな人に秘めていた性癖を知られ、綾人は苦しむ。 「昨日のあれは付き合っている男か?」 「ちがっ!!」  自分が好きな人は凌雅ただひとり。  だから付き合っている男などいない。  それをわかってもらおうと口を開くものの、綾人の否定は逆効果だった。  凌雅の怒りを買ってしまったと知ったのは、彼の薄い唇をひん曲げ、笑みを浮かべたからだ。  はじめて見せる怒気を含んだその姿に綾人は何も言えず、ただただ身体を震わせる。 「へぇ。じゃあ自分を抱いてくれる男なら誰でもいいっていうわけか? それだったら俺だって構わないはずだよな」  凌雅はなぜ、そんなことを言うのだろうか。  訳がわからない。  綾人はパニック状態だ。 「んっ、いやっ……りょうがっ! だって、こういうことしたことないでしょう?」 「ああ、お前がはじめてだ。でも別に構わないだろ?何事も経験だし?」  普段、弧を描く薄い唇は、しかしその笑みではなく、口角が上がり、嫌みったらしい笑みを浮かべている。  凌雅は首元にあった自分のネクタイを外すと、綾人の両手首に巻きつけ、抵抗できないようにした。

ともだちにシェアしよう!