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第3話・拘束
「家庭教師の……バイトの帰り道で見かけた。そっか、やっぱ、お前だったのか……」
凌雅の表情に影が宿る。
彼は長机の上に綾人の身体を押し倒した。
室内には机が引きずられる大きな音が響く。しかしその音さえも、今の綾人には小さく聞こえた。
頭の中で大きく響いているのは、綾人を非難する凌雅の声だ。
「……っつ」
自分がゲイだということを知られた。
誰にでも身体を開く、不埒な奴だと軽蔑された。
恐れていたことが実際に起こってしまった。
好きな人に秘めていた性癖を知られ、綾人は苦しむ。
「昨日のあれは付き合っている男か?」
「ちがっ!!」
自分が好きな人は凌雅ただひとり。
だから付き合っている男などいない。
それをわかってもらおうと口を開くものの、綾人の否定は逆効果だった。
凌雅の怒りを買ってしまったと知ったのは、彼の薄い唇をひん曲げ、笑みを浮かべたからだ。
はじめて見せる怒気を含んだその姿に綾人は何も言えず、ただただ身体を震わせる。
「へぇ。じゃあ自分を抱いてくれる男なら誰でもいいっていうわけか? それだったら俺だって構わないはずだよな」
凌雅はなぜ、そんなことを言うのだろうか。
訳がわからない。
綾人はパニック状態だ。
「んっ、いやっ……りょうがっ! だって、こういうことしたことないでしょう?」
「ああ、お前がはじめてだ。でも別に構わないだろ?何事も経験だし?」
普段、弧を描く薄い唇は、しかしその笑みではなく、口角が上がり、嫌みったらしい笑みを浮かべている。
凌雅は首元にあった自分のネクタイを外すと、綾人の両手首に巻きつけ、抵抗できないようにした。
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