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第4話・remorse
◆
いつの頃からだろう。
凌雅 にとって綾人 のポジションが変化したのはーー。
凌雅は知らず知らずのうちに綾人を意識しはじめていた。
少なくとも高校を卒業した直後は友人のままだったはずだ。
しかし、綾人と同じ大学に通うに連れ、彼は日に日に色香を持ちはじめた。
たとえば何か他愛のない話をするために動く赤い唇であったりーー。
たとえばS字になっている鎖骨が気になったりーー。
たとえばはしばみ色をした目が潤んでいるように見えたりーー。
たとえば頬を膨らませ、拗ねる姿が可愛いと思うようになったりーー。
綾人のことを考えるときりがない。
『たとえば』が果てしなく思い浮かぶ……。
しかし本人はそれを恋だとは思いもしなかった。
それというのも、凌雅は昔から色恋沙汰にあまり興味が湧かなかったからだ。
なにせ中学や高校でも毎日のように異性から告白されることはあっても、恋をする方ではなかった。
当然、自分が想いを寄せる相手もいない。
凌雅は大学生になった今の今まで、恋人のいる生活を考えたことは一度たりとも考えたことはない。
況 してや、同性の相手に好意を持つことなんてそれこそ皆無だ。
だから気づかなかった。
ーーいや、気づけなかったという方が正しいのかもしれない。
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