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第4話・憤り
その理由は一目瞭然だ。
同性同士でも恋愛が成り立つのは知っている。
そういう性癖を持った人間は少なからずいるだろうし、偏見だってなかったつもりだ。
しかし、よりにもよってどうしてそれが綾人なのか。
凌雅は動揺を隠せなかった。
そして次に感じたのは深い憤りだ。
なぜ綾人はそういう性癖があるということを自分に打ち明けなかったのか。
なぜ、相手があの三十路の男なのか。
綾人に対する言い知れない怒りが込み上げてくる。
その気持ちは翌日になっても消えることはなく、それどころか増す一方だった。
そして極め付きは、一緒にいた相手が綾人の恋人かと尋ねた時だ。
彼はすぐに否定した。
ならば綾人にとって、相手は誰でも良かったということなのか。
それならば何故、自分を相手に選ばなかったのか。
綾人への苛立ちが頂点に達した時、凌雅は気がつけば綾人を組み敷き、抱いた。
まだ慣らしていない後孔に自らの熱い楔を突っ込み、痛がっていたにもかかわらず、抱いてしまった。
その罪悪感が凌雅を襲う。
涙を溜め、悲壮感漂う綾人が頭から離れない。
無理矢理綾人を抱いたことと、もっとずっと早くに自分の恋に気がついていればこんなことにならなかったのかもしれないという自己嫌悪が凌雅に付きまとう。
果たして自分と綾人の関係はこれで終わってしまうのか。
このまま自分ではない男に綾人を取られてしまうのか。
それ以前に、自分はもう、綾人に嫌われてしまったかもしれない。
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