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第5話・切望
「残念だけど、こいつに見合うのはあんたみたいなおっさんじゃなくて、あんたよりもずっと顔も性格もいい俺の方なんだよ」
凌雅は相変わらず自信たっぷりの物言いだ。
しかし、モデルのような容姿の凌雅を目にした誰もが違うと言い切れないのも事実だ。
自分に自信があるところもまた彼の魅力でもある。
「綾人……」
そうだろう?
耳元で息を吹きかけられ、尋ねられればもう何もできない。
「ん……」
綾人はゆっくりと頷いた。
「凌雅、凌雅……」
この凌雅が幻覚でもいい。
綾人は凌雅の首に腕を回し、縋りついた。
トクントクンと規則正しく鼓動する心音が心地好い。
綾人はたくましい凌雅に身体を預けた。
「綾人……」
熱っぽい声が綾人の旋毛に触れたかと思うと、腰に回されていた手は頬へ移動した。
その手に促 されるまま上を向くと、綾人の唇が塞がれる。
「っふ、んぅう……」
信じられなかった。
だって今、自分の唇を塞いでいるのはバーで知り合った男ではなく、自分が想いを寄せているその人なのだ。
だからこれは綾人の勝手な夢だと自分に言い聞かせる。
そうこうしている間にも彼の手が後頭部へ移動し、綾人の口角が代わる。
そうなるとよりいっそう唇の接合が深くなった。
「んっ、っふ……」
綾人が悩ましげに唇を開くと、滑らかな舌が口内に入ってくる。
上顎から歯列へ、そして下顎へと我が物顔で口内を蹂躙する舌を追いかけ、絡めると、凌雅もまた負けじと綾人の唇を貪る。
キスの合間には綾人の悩ましげな声が弾き出る。
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