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第5話・この手を離して。

「綾人? 好きってなに? どういうこと?」  自ら犯してしまった罪を言わなければならないことが辛い。  それでも自分がしたことは凌雅を穢す行為に他ならない。  綾人はゆっくり唇を開く。 「りょ、凌雅に嫌われるのが恐くて告白できなかった。意気地のない僕が悪かったんだ。僕と同じような性癖の人が集まるバーで凌雅に似た仕草や格好の人を探して、凌雅を重ねて寝た……」 「じゃあ、さっきのも?」  尋ねる凌雅の声は不機嫌だ。  たしかに、あの男と凌雅が似たような箇所があると言われたらショックだろう。  なにせあの男といったら、凌雅とはかけ離れすぎたルックスだった。 「あれは……もうヤケになったっていうか……凌雅に嫌われたから……どうでもいいかと思って……」  もういいでしょう? 離してーー。  綾人は三度口を開く。  だが、力強い腕は綾人を離さなかった。  それどころか、さっきよりもずっと強い力で閉じ込められる。 「凌雅!!」  パニックになった綾人は短い悲鳴を上げた。 「嫌だ。離すもんか。ーーああ、嘘だろう? 綾人が俺を好きってなんだよそれ」  困惑を隠せない綾人の旋毛に、唇が落とされた。 「違うんだ。謝るのは俺の方だ。なんていうの、この気持ち。すげぇ嬉しい!!」 「りょう……が?」  てっきり凌雅に拒絶されるのかと思っていた綾人は、これには驚いた。  綾人は瞬きを繰り返す。そのたびに、大粒の涙がこぼれ落ちていく……。 「……違うんだ。今朝のは、その、なんていうか……お前に当たったんだ。……ごめん」

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