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第5話・たとえ夢でも。

「当たる?」  彼はいったい何を言っているのだろうか。  綾人の頭は混乱している。  眉根を寄せ、彼を見上げると、凌雅は整った眉毛をハの字にして苦笑を漏らしていた。 「綾人の一番は俺じゃないって思ったら腹が立ってきて……。綾人が知らない男と一緒にいることが嫌だった……俺ってほんとまだまだガキだよな」 「えっ? それって……?」 「好きだよ綾人。俺は君を想っている」 「っつ!!」  これは夢? それとも現実?  綾人は恐る恐る、凌雅の頬に触れた。  凌雅を確かめる行為に、凌雅もまた綾人の手を大きな手で覆う。  凌雅は綾人の手をそのまま薄い唇まで滑らせ、手のひらにキスを落とした。 「んっ……」  綾人がくすぐったくて肩を窄ませると、薄い唇が綾人の耳朶を食んだ。 「お前はずっと俺の側にいるもんだと勘違いしていたんだ。いなくなって初めて気が付いた。酷いことをしたのは自覚しているし、謝って済む問題じゃないのはわかってる。だけど俺は……」 「凌雅……好きでいていいの? 凌雅を想っていてもいい?」  綾人は現実が信じられず、凌雅の言葉を遮った。 「綾人が嫌だって言っても、俺が未練たらしく綾人を想うし、離さない」  凌雅がそんなことを思うわけがない。  だって彼はいつだって冷静沈着だ。  どんなに美人な女性に告白されても見向きもしなかったその彼が、同性で、しかも他の男に身体を開く穢らわしい自分を想ってくれるはずがない。  綾人は四年もの間、ずっと凌雅に恋をしていたのだ。

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