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第5話・妄想? 夢? それでも……。

 これはきっと何かの間違いで、もしかしたら自分はおかしな妄想をしているのかもしれない。  でも、それでも……。  今を逃したら、これ以上の幸福はないだろう。 「夢、でもいい。僕は……」  天にも昇る気持ちとはまさにこういうことを言うのだろう。  綾人は涙ぐみ、凌雅に縋る。 「う~ん、夢じゃないんだけどな……」  困ったようにそう言う凌雅の手が、綾人の腰に回る。  たとえ夢の中でも自分を受け入れてくれる凌雅が嬉しくて、彼の胸に頬を寄せた。  しかし、どうも様子が変だ。綾人の腰に回っている凌雅の手の動きがおかしい。  凌雅は綾人のそこをしきりに撫でている。 「あの、凌雅? お尻……」  綾人は自分の双丘を撫でる手に身じろいだ。  どうしたのかと彼を窺えば、凌雅は唇の端を上げ、いたずらっぽく微笑んだ。 「セックスのやり直し、させて」  その言葉の意味は知っている。彼は綾人を抱く気だ。  実感すると、綾人の身体が熱を持ち、疼きはじめる。 「……っでも、あの……」  恥ずかしい。  いくら自分を組み敷く凌雅に抱かれる空想をしていたとはいえ、しかし、実際に凌雅と両想いになるとは夢にも思っていなかった。  いや、実際といっても今のこれは夢だと思うから現実ではないにしても、それでも凌雅とのセックスは他の相手とは訳が違う。  綾人の心臓は大きく鼓動を繰り返している。

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