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第5話・釘付け
「ラブホテルが目の前にあるのにやることをやらないのは恋人としてどうなの?」
耳元で尋ねられた凌雅の甘い吐息が綾人の耳孔に直接注ぎ込まれる。
「それにこれは綾人の夢なんだから、別にいいでしょう?」
「そう、だったとしても、でもっ!!」
たとえ夢でも好きな人に抱かれるのだ。心の準備というものが必要になる。
「…………」
なんて勝手な夢だろう。
それだけ自分は凌雅に抱かれたいと思っているのだろうか。
自分の目の前にいる凛々しい凌雅を恨みがましく睨んでみると、薄い唇が孤を描く。
凌雅の姿に見惚れた綾人は、彼に釘付け状態だ。
「綾人が欲しい」
「っつ!!」
耳元でぼそりと囁く凌雅に、綾人は身体を震わせた。
(凌雅……)
綾人はにっこり微笑む凌雅に抵抗できず、観念して頷いた。
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