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epilog
◆
今はいったい何時頃だろうか。
カーテンの隙間から入り込む陽の光が眩しい。
そういえば、昨日はいつもセットしている目覚まし時計のアラームを解除していなかったような気がする。
土曜日の休日まで目覚まし時計に起こされたくはない綾人 は、頭上にある目覚まし時計のアラームを解除しようと手を伸ばした。
しかし、伸ばした手の先には目覚まし時計はなく、綾人の手は空を掴むばかりだ。
「あれ? ない?」
綾人は顔をしかめ、そこでようやくゆっくりと目を開ける。
するとタイミングよく部屋のドアが開く音がした。
「おはよう、よく眠れた?」
綾人に掛けられたその声は低いもので、母親ではない。
しかし父親のものでもなかった。
けれどもその声の主はよく知っている。
「えっ? 凌雅 ?」
(まさか!)
驚いて勢いよく目を開けると、そこには綾人の想い人、蝦名 凌雅が立っているではないか。
綾人は凌雅の姿を見るなりベッドから身体を起こした。
そうすると、身体に巻き付いていた毛布がはらりと落ちる。
自分が何も着ていない事に気がついた。
その肌には真新しい赤い愛撫の痕が残っている。
綾人は慌ててふたたび毛布を身体に巻きつけた。
見回せば、そこはたしかに見慣れた自分の部屋ではない。
部屋にはダブルベッドとクローゼットの他には何も見当たらなかった。
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