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epilog
「……キスマークってなに? ……しかも、ホテルってなにっ?」
凌雅の口からいかがわしい単語がいくつも出てくる。
尋ねる綾人の声が裏返った。
『ホテル』という言葉で思い出すのは、凌雅に無理矢理抱かれたその夜、例のバーで適当に引っかけた男とホテルに行く時、急に好きな人以外に組み敷かれるのが恐くなって拒んだことと、そこで凌雅が助けに来てくれたことーー。
『キスマーク』で思い出すのは両想いになって凌雅に抱かれたことだ……。
しかしこれらは綾人の勝手な妄想で現実ではない、はずだ。
それなのに、凌雅は綾人の妄想を現実に起こったことのように話す。
眉間に刻まれた皺が深くなる一方だ。
「お前、昨夜のこと、ほんとにただの夢だと思ってんの? 高校ん時からボケっとしたところはあったけど、まさかここまでだったとは……。まあ、そこがまた放っておけないってのはあったんだよな。目が離せなかった……思い返せばそれが恋だったんだよな……」
綾人の隣に腰を下ろした凌雅は、色素の薄い髪に触れた。
「こいっ?」
またもや綾人の声が裏返る。
「そ、恋。だけどもういい加減自覚してくんない? どんなに好きって言っても綾人はそれを夢だと言い張って聞かなかったもんな。……っていうかお前のおばさん、俺を信用しすぎ……一緒に住んでもいいかと聞いてみたら、すんなり了承した」
「……なんて言って説得したの?」
綾人はもはや凌雅の言っている言葉の意味がわからない。
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