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epilog

 それでもどこかに矛盾があるはずだと、凌雅の話を聞き逃すことなく耳を傾け、尋ねてみる。 「大学帰りにほっつき歩いている綾人を見つけたって連絡した」 「そしたら?」 「俺の別荘が大学の近くにあるから、綾人と一緒に別荘をシェアしたいって言った。そうしたらお前の母親、なんて言ったと思う? 『綾人が最近門限を破るようになって困っているから、ついでに監視もしてくれ』ってさ。その代わり、綾人はよく家事の手伝いをしてくれているから、料理もできるって。コキ使ってくれてかまわないって、おばさん言ってたぞ?」 「…………」  そういえば、綾人の家に凌雅を連れて来た時があった。綾人の母はしっかりものの凌雅をとても気に入っていた。彼が自分の息子ならと、凌雅と顔を合わせるその度に毎回口癖のよう言っていたのを思い出す。  しかし、いくら綾人の両親が了承しても、凌雅の両親はどうだろう。  自分と一緒に暮らすという提案を簡単に呑むはずがない。 「それで? 凌雅のご両親はなんて言ったの?」  綾人は眉間に皺を寄せながら凌雅に尋ねる。 「俺の両親は綾人を気に入ってるんだ。お前も俺の家に何回か遊びに来たことがあっただろう? 今どきの子供には珍しい礼儀正しい子だって、綾人をべた褒め。俺はお前とは違って料理もそこまでできねぇし、家も留主にしがちだから食事も執事たちにまかせきりだし、一緒に住んでくれるんだったらそれに越したことはないって手放しで喜んでた」

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