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第2話
「まーりーっっ」
ガンっと蹴るように部屋のドアを開けられ、思わず携帯電話の通話終了ボタンを押してしまった。
おそるおそる振り返ると、長くてつやつやした茶色の髪の毛を振り乱した姉、百合亜が立っていた。
百合亜ちゃんは、俺と似ていて可愛らしい美人さんで学校でもテレビから出て来たアイドルのようにモテモテ。
なのに、家では強気な性格を全面に俺へぶつけてくるから、こわい。
…学校で、3枚ほど猫をかぶってる鬱憤を俺で晴らしてるんだ。
にっこり微笑んで、俺の目の前にビニール袋を差し出す。
「…なに、ゆりあちゃん」
「これ、ママが日野さんちに渡してきてって」
ちらりと見えた中には、大きなスイカが入っている。
…なんで俺が、という気持ちを込めて、はぁ…と溜め息を吐いた。
「俺、電話中だったんだけど」
「電話ってどうせE組のばか女でしょ?誰だっけ、今付き合ってるの…確か、三浦…」
「三浦優樹菜」
「そうそう、あの可愛くない女ね。前回も女も可愛くなかったけど。まりってほんと、趣味悪いよね」
「…優樹菜ちゃんは、かわいいよ」
「ばっかだね、あんた。女は化粧で化けんのよ、騙されちゃって可哀相」
「手厳しいね、ゆりあちゃんは」
「あんたが馬鹿なだけ。で、重いんだけど。早く受け取ってよ」
「…ゆりあちゃんが行ってよ」
「はぁ?なんであたしが」
「母さんに頼まれたの、ゆりあちゃんでしょ」
「こんな重いもの、3分と持っていられないわ」
…とか言いながら、片手で軽く持ってるように見えるけど。
結局、何を言っても姉には敵わないと3歳の時から身を持って解っているので、渋々ビニール袋を受け取った。
百合亜ちゃんは満足そうに、「優しい、さすがまり」と微笑む。
くるりと踵を返し、鼻歌混じりに部屋を出て行った。
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