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第5話

 はははっと誤魔化すように笑って、立ち上がる。   「何処行くんだ、まり。ホームルーム始まるぞ」 「…保健室」 「とかなんとかいって、女の子とえっちなことするんだろ!」 「…しね」  ひらひらと手を振って、教室のドアへ向かって歩く。  視界の端に、難しい顔をしてやたらに分厚い本を読む碧生の顔が見えた。  …そう、全部あいつのせいだ。  スイカを渡した後、部屋に着いてもずぅっとモヤモヤしていた。  心の中をぜんぶ掻き毟りたいような、そんな感じ。  小学校以来の、おさななじみ。  誰よりも仲良くて、誰よりも一緒に居たおさななじみ。  あからさまに、拒絶したような態度をされた。  俺のこと、嫌悪感で溢れたような目で見た。  まるで、小さな頃のことなんか全部忘れたかのように。  小学生までは、「まりちゃん、まりちゃん」って俺の後を追いかけて来てたくせに。  俺がいないと寝れないって、泣きながらベッドに入って来てたくせに。  あの目を思い出すと、胸のどっかがぐぅっと痛んで、どうしていいのかわからない。  何かにぶつけたくて壁を殴ったら、逆に俺が百合亜ちゃんに殴られてしまった。  くそっ、なんなんだよ。  枕を一発殴ったところで、スマホが震えた。  相手は、今の彼女。高校入って何人目だっけ、…思い出せもしないほど。  女の子はかわいくて、嫌いじゃない。  嫌いじゃないから、告白されたら付き合う。  全く興味が持てなくなったら、別れる。  その繰り返し。  だって、恋愛なんてそんなもんでしょ。  ぼんやりとスマホの画面を見ていると、一度切れて、ラインが来て、また電話が来た。  さっき変な切り方しちゃったから、何度もかけて来てくれていたんだな。  …でも、今はすごくめんどくさい。

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