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第7話
『で、その日野君がどうしたの』
「俺ね、日野碧生と幼馴染なの」
『えっ、うそーっ!だって、話してるとこ見たいことない』
「…うん」
『信じられないよ~、まりくんと日野君って全然別の人種みたいだし』
「…」
『一緒に並んでるとこ、想像すら出来ないよ!!』
彼女ははははっと、鈴を転がしたような声で笑った。
…でも、小学校まではずっと一緒だったんだ。
毎日、一緒に居たんだよ。
そのあと、気が付けば俺は一方的な別れの言葉を口に出していた。
彼女は泣いていたけど、どうでもよくなった。
…なんなんだよ、ほんと。
モヤモヤモヤモヤ。
心の中を、厚い灰色の雲で覆われたみたいだ。
保健室の千早先生に「具合が悪い」と全力でアピールして、無理矢理ベッドで寝かせてもらった。
多分、演技だってばれてるんだろうな。美人さんの顔が苦笑いだったし。
それでも必死さが伝わったのか、寝不足が伝わったのか、「好きなだけ寝ていいよ」と言ってくれた。
ほんと、キレイだよなぁ千早先生。
先生が女だったら、絶対本気で惚れてるよ。
硬くてちょっと消毒薬臭いベッドの上に、ころりと寝転がる。
低めの窓から見上げる空は、憎たらしいほど真っ青だった。
「…なんで、今日先に帰ったの」
碧生が、俺の横顔を睨む。
下唇を噛んで、ふるふると今にも泣きそうだ。
俺は昨日付き合ったばかりの2歳上の先輩に作るメールのことでいっぱいだったから、視界の隅でしかその顔を見ていなかった。
というより、ただ映っていたというだけ。
「別にー。一緒に帰るって約束してるわけじゃないじゃん」
「そ、っ…そうだけど…、いつも一緒に帰ってたし…」
「いつもって小学生の時でしょ。中学生になって、俺も色々忙しいんだよね」
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