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第10話
「聞いたぜ~、まりとひのっち幼馴染なんだってな」
「…なんで」
「さっき三浦がお前に会いに来てた。その時に聞いたんだ」
…昨日までの彼女が、勝手にそんなこと。
最悪。言うんじゃなかった。
強張る表情の俺をよそに、ヤスは楽しそうに笑った。
「ひのっち、頭良いし、実は運動もすげーし。まりの幼馴染なら俺らもトモダチになろうと思ってな!」
「…」
幼馴染っていったって、もう何年も話してなかったんだよ。
友達…なのかさえも、怪しい。
…ただでさえ、昨日思いっきり拒絶されたばっかりなのに。
「…まり?」
「…碧生は、いいの」
人付き合いが苦手で、騒がしいことが嫌いで、静かに過ごしたい碧生。
ただでさえ、なにかとうるさい俺らだ。
間違いなく、迷惑かけるだろう。
思わず窺うように尋ねると、碧生の顔がやっと動いた。
本をぱたんと閉じ、俺の顔を真っ直ぐ捉える。
表情からは、何も読むことが出来なかった。
「…別に、どっちでも」
「本当に?俺ら傍に居たら、迷惑じゃない」
「…別に」
「そっか」
無表情のその顔が何を思っているかは、全く分からなかった。
けど、本当になんとなく。…もしかしたら、俺の願望だったのかもしれないけど。
なんとなく碧生が嬉しそうな気がしたから、それ以上問うのは止めた。
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