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第11話
昼休みが終わり、移動教室も授業と授業の間も碧生は俺たちの輪の中にいた。
放課後、「仲良くなった記念だー」とヤスが無理矢理誘って、みんなでカラオケに行くことになった。
碧生は少し嫌そうな顔をしていたが、黙って付いてきた。
一度も歌うことはなかったけど、馬鹿騒ぎをする俺らを見てほんの少し楽しそうに微笑んだりもしていた。
…変な感じがする。
今日の朝までは、「幼馴染」だったけど「他人」だったのに。
ちょっとしたきっかけで、隣に碧生が居る。
なんか、昔に戻ったみたいで…不思議。
不意に、目が合った。
薄暗い部屋でブラックライトの青い光が、碧生の顔を照らす。
「…」
俺は、自然に碧生へ笑いかけていた。
「…」
碧生も俺に向かってにっこりと微笑む。
それは、小学生の頃と何も変わらない笑顔。
…なんだ。
なーんも変わってないじゃん、碧生。
昨日のあの顔は、きっと気のせいだったんだ。
良かった。
心の中に感じていたモヤモヤなんて、一瞬で晴れてしまったのだから、俺はなんて単純なんだろう。
すっかり空が真っ暗になった帰り道。
当然、俺と碧生は同じ道を一緒に帰る。
トコトコと、ほんの少し俯き加減で碧生は俺の横を歩いていた。
二の腕あたりの位置にある碧生の顔は、慣れない雰囲気に疲れたのか、時折大きな息を吐き出す。
いつの間に、こんな身長差になったんだろ。
昔は、同じくらいの目線だったのになぁ。
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