13 / 138
第13話
「まーりっ」
また、ノックもせずに百合亜ちゃんが部屋のドアを開けた。
…っとに、俺が一人でえっちなこととかしてたらどうするつもりなんだろ。
ま、百合亜ちゃんはそんな姿を見ても動揺一つせずに、用件だけ言い渡して出て行くだろう。
いい意味で、とても肝が据わっている姉だから。
「なーに」
俺はヤスから借りたアクションゲームをしながら、適当な返事をする。
百合亜は「へぇ、珍しい」と高い声を上げ、俺の横にどさっとビニール袋を置いた。
「これ、日野さんちに渡して来てってママが」
「今日はなに?メロン?」
「叔母ちゃんから貰ったんだって」
「へえ」
「…あんた、今日はヤダって言わないんだ」
「ヤダって言っても俺が行くことになるでしょ」
百合亜ちゃんが、何か探るような視線を巡らす。
…絶対、ばれた。
お隣さんへモノを届けに行くのを、少し喜んでいることに。
百合亜ちゃんは、有無を言わさず俺から携帯ゲーム機を奪い取る。
ピロリ~と響いた音は、多分ゲームの主人公が戦闘に負けた音。
「ちょっ、返してよ」
「…今日は誰かとメールとか電話とかしてないんだ。一週間前に別れたって聞いたけど」
…おんなのこって、なんでこんなに噂が広まるの早いんだろ。
ちょっと、こわい。
ともだちにシェアしよう!