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第13話

「まーりっ」  また、ノックもせずに百合亜ちゃんが部屋のドアを開けた。  …っとに、俺が一人でえっちなこととかしてたらどうするつもりなんだろ。  ま、百合亜ちゃんはそんな姿を見ても動揺一つせずに、用件だけ言い渡して出て行くだろう。  いい意味で、とても肝が据わっている姉だから。 「なーに」  俺はヤスから借りたアクションゲームをしながら、適当な返事をする。  百合亜は「へぇ、珍しい」と高い声を上げ、俺の横にどさっとビニール袋を置いた。 「これ、日野さんちに渡して来てってママが」 「今日はなに?メロン?」 「叔母ちゃんから貰ったんだって」 「へえ」 「…あんた、今日はヤダって言わないんだ」 「ヤダって言っても俺が行くことになるでしょ」  百合亜ちゃんが、何か探るような視線を巡らす。  …絶対、ばれた。  お隣さんへモノを届けに行くのを、少し喜んでいることに。  百合亜ちゃんは、有無を言わさず俺から携帯ゲーム機を奪い取る。  ピロリ~と響いた音は、多分ゲームの主人公が戦闘に負けた音。 「ちょっ、返してよ」 「…今日は誰かとメールとか電話とかしてないんだ。一週間前に別れたって聞いたけど」  …おんなのこって、なんでこんなに噂が広まるの早いんだろ。  ちょっと、こわい。

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