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第15話

 碧生と学校生活を過ごすようになって、一週間がたった。  戸惑っていたように見えた碧生も、今では俺たち3人にすっかり馴染んでくれた。  馴染むというよりは、囲まれたことに慣れたというべきか。  女の子たちも最初は興味津々に色々質問攻めをしていたが、何一つ反応しない碧生のことを『そういうもんなんだ』と理解したようだ。  さすが、おんなのこの柔軟性はすごいと思う。  俺は妙に碧生と居れる時間が嬉しくて、時間が有る限り碧生と一緒に居た。    昔に戻れたような懐かしい感覚が、たまらなく落ち着く。  碧生は小学生の時から比べると、全然甘えたり、頼ったりしてくれないけど。  あれだけひとに囲まれていても、ほとんど俺としか目を合わさないし、話さない。  微笑みかけるのは、俺にだけ。  そんな優越感も、自分勝手に味わっていた。  百合亜の言うとおり、一週間女の子と付き合っていない時期は、中学入ってから初めてだったかも。  でも、まぁ今はいいや。  碧生がいるから、いいや。  ピンポーンッと玄関のチャイムが響いて、「はいはい」とスリッパの音を鳴らした優子さんが出て来た。  俺を見て、嬉しそうに微笑む。 「優子さん、こんばんは。これ、メロンだって」 「ありがとう。毬也君は日に日にかっこよくなっていくわね」 「へへっ、ありがとう。優子さんも日に日に綺麗になってくね」 「あらやだ。お上手なんだから」  ぱしっと肩を叩かれたあと、優子さんの肩越しに家の中を見た。  …碧生は、部屋に居るのかな。  つい何時間前に一緒に帰って来たから、どっかに行ってはいないと思うけど。  優子さんはそんな俺の本音に鋭く気付いてくれた。  にっこり笑って、優しく腕を引く。 「碧生はお風呂。部屋に入って待ってたら」 「うん、お邪魔しまーす」  サンダルを脱いで、小さな頃のもう一つの実家に上がった。  緑色の玄関マットとか、トイレのドアに掛けられた手作りのプレートとか。  久々に入った日野家は、本当に懐かしいものばかり。  昔とは視線が全然違うのが、ちょっと変な感じだ。

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