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第17話

 ま、ホワイトデイだから、忘れたくても忘れられないか。  小さい時は誕生日プレゼントを貰うと同時に、母さんと百合亜ちゃんにバレンタインデイのお返しをしなきゃいけなくて、誕生日がすごく嫌だった。  お返しを買うついでに、碧生にもあげたりしてた。  碧生はいつも「僕の誕生日じゃないのに」って言ってて、いつからかバレンタインにチョコくれるようになったっけ。  優子さんと一緒に手作りとかしちゃって、女の子から貰うやつより美味しかったなぁ。  「これで、平等」って、満足げに微笑んでいた顔を、今でもぼんやり思い出せる。  …でも、何度頑張って考えても碧生の誕生日がまったく思い出せないので、話題を変えることにした。  ごめんね、碧生。 「そういや、ゆりあちゃんがよろしくって言ってたよ」 「…そう」 「学校でゆりあちゃんと会ったり、話したりしてる?」 「…してない。百合亜はいつもひとに囲まれてる」 「あははっ、そうだよね。ゆりあちゃんの周りはいっつも人で溢れてるよね」 「…毬也だって、同じ」 「ん?」 「毬也もいつもひとに囲まれてる」 「…」  碧生が、何か伝えたげな視線で俺の目をじぃっと見る。  …なんだろ。わかんない。  表情だけで気持ちが全部わかるほど、頭が良いわけじゃないし、超能力者でもない。  碧生は余り表情が豊かじゃないから、特に解りづらい。  それはずぅっと一緒に居た時間が有ったからといって、同じこと。  わからないものは、わからない。  小さい時も、碧生は何か言いたそうな顔をするくせに、ぶつけてくることがなく飲み込むことがあった。  性格なのかな、俺も気まぐれだから聞き返したり聞き返さなかったりだけど。    仕方ないから、今は気にしないことにした。  無理に聞き出さなくても、言いたくなったら言ってくれるだろう。  にっこり微笑んで、その視線の奥の意味から目を逸らす。

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