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第18話
「あー、…そういや碧生っていつも帰るの遅かったよね。21時頃来てもいないしさ。最近はそんなことないけど」
「…うん」
「何やってんの、塾とか?」
「……部活」
「あっ、そっか。吹奏楽部だったよね、あの有名な」
詳しくは知らないけど、うちの高校の吹奏楽部は、全国大会での金賞が常連で、ご指名でプロの演奏会に呼ばれるほど有名らしい。
そんな部の、フルート担当してるんだっけ。
そりゃあ、夜遅いよね。大変だよね。
部活をしていない俺には、まったく経験のないことだけど。
「いつも何時までやってんの」
「…21時過ぎる。大会前は23時くらい」
「はー、ほんと大変だね。勉強して部活して、毎日フラフラになっちゃうね」
「…毬也は」
「部活はしてないよ」
「知ってる。…じゃなくて、……恋人とか」
「あぁ、彼女?今はいないし」
「…いたら、忙しくなる」
「んー、まぁ彼女出来たら帰って来るのはちょっと遅くなるかもね」
「……一緒に、帰れなくなる」
「碧生だって、部活ある日は一緒に帰れないじゃん」
「…」
「家も隣だしクラスも一緒だし、まいっか」
俺は、多分当分彼女作らないしね。
あははっと笑い声を上げながら、心の中で呟いた。
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