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第20話
「…」
普段なら、考えることなく行っていた。
用事がない日なんて作る気もなかったし、みんなで楽しく遊ぶのは大好き。
…でも、なんでだろう。
全然、行く気になれないのは。
宇仁女は有名高校であるうちの高校の中でも人気のある、名門のお嬢様学校で、質がとても高いと憧れてる男が多い。
制服もセーラー服で可愛いし、学校全体から醸し出されるような清楚な感じが良いよね。
それなのに、その素敵なはずのお誘いが、全く魅力的なものに感じなかった。
こんな気分は、初めてかも。
「まり?」
「んー、今日はやめとく」
「はぁっ?何言ってんの!天下の宇仁女だぜ?お前、杏奈ちゃんのこと気に入ってたじゃん!!」
「うーん…、なんか今日はいいや」
「えぇえっ何言ってんだ!もうまりは来るって言っちゃったし」
「ごめんねぇ」
困ったように微笑むと、クラスメイトの迷惑を顧みず、ヤスが頭を抱えて「ありえねぇええ」と叫んだ。
クスクスと女子の笑い声に包まれる中、他人のふりをしながら眺めていた礼二が苦笑いでヤスの肩を叩く。
「…ヤス、諦めろ。仕方ないから、今日は俺が行ってやろう」
「えぇっまじで?いいの?!」
「あぁ、お前ひとりじゃ荷が重いだろう」
助かった。
やっぱ、礼二は優しいなぁ。
「じゃあな、まり。また明日」
「次は絶対来いよー」
「はいはい、いってらっしゃい」
教室から出て行く二人に手を振りながら見送る。
一度振り返った礼二が、クールな微笑みを浮かべて言った。
「まりは、碧生君が部活でいないから拗ねてるんだよな」
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