24 / 138
第24話
「ゆりあちゃん、ゆりあちゃーん」
隣の部屋のドアを勢いよくノックすると、中からコンタクトを外して眼鏡姿の百合亜ちゃんが出て来た。
多分、さっさとお風呂に入って、美容の為にもう寝ようとか考えていたのだろう。
眉間に皺を寄せ、面倒臭そうに口を開く。
「…何よ、うるさいんだけど」
「ね、ゆりあちゃん」
「なに」
「碧生の携帯番号知ってる?」
「は?」
「碧生の携帯番号とメルアドとラインID、教えてよ」
必死な思考は碧生の家に押しかけるという直接的な行動ではなく、スマホで連絡を取りたいという間接的な行動を選択した。
少し、びびっているのかもしれない。
あの碧生を見た後だから。
それでもどうしても今すぐに確かめたくて。
俺が碧生と距離を置いていた数年間。
百合亜ちゃんと碧生が、どんな関係でいたのかは知らない。
幼馴染のまま仲良くしていたのかもしれないし、俺みたいに離れてしまっていたのかもしれないけど。
百合亜ちゃんなら、きっと知ってる。直感でそう思った。
百合亜ちゃんは、はぁ…と大きな溜め息を吐く。
「…あんた、なんで知らないの」
「百合亜ちゃんはなんで知ってるの」
「はぁ?知ってるでしょ、ふつー。幼馴染なんだし」
ほんとにね。
俺は高校生になってからの碧生のこと、なんにも知らない。
スマホを持ち始めたことさえ、百合亜ちゃんの返答を聞いたこの瞬間まで確信がなかったのだから。
ともだちにシェアしよう!