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第31話

「行きたいと思ったら行くから。また誘って?」 「じゃあ、今日!また宇仁女の子たち誘って晩御飯食べに行こう」 「…晩御飯ね。碧生は行く?」 「…部活」 「部活のあとは?」 「…遅いから」 「だよね、じゃあ俺も行かない」 「はぁあっ?意味わかんねぇし!」 「ごめんね、ヤス」 「まりっ、俺とひのっちどっちが大事なんだよ!」 「んー、碧生」  ヤスはまた「しんじらんねぇーー」と頭を抱えて大声で叫び、横で苦笑していた礼二に宥められていた。  だって、しょうがないじゃん。  碧生と一緒に帰りたいんだもん。 「…まりって、本当に不器用だよな」  興奮した犬を落ち着かせるかのように、手早くヤスを宥めた礼二が眼鏡を中指で上げて言った。 「不器用?」 「あぁ、不器用。一つのことしか考えられないっていうか」 「…」  確かに、その通りかもしれない。  今まで、彼女が居た時はその彼女のことだけを考えるようにしていた。  今横に居る彼女を大切にしたいから、どんなにほかの女の子に言い寄られても、浮気するとかほかの子にいくとかそういうことは絶対にしない。  精一杯大切にしてみて、それでも本気で好きになれなくて、興味がなくなっていったから別れた。  だから、付き合っては別れてを繰り返しているけれど、悪く言われることはないのかもしれない。  …こないだ、一方的に別れを切り出した優樹菜ちゃんは例外として。  今は、碧生のことでいっぱい。  だって大切な幼馴染だし、傍にいたいし。    さすが、礼二。…当然のように気付かれてたんだな。

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