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第34話
俺はD組で、百合亜ちゃんはA組。
教室は離れているし、姉弟だからといって学校内でも馴れあう仲ではない。
廊下ですれ違ってもあえて挨拶はしないような、たまに教科書の貸し借りをする程度の触れ合いだった。
そもそも双子でないからか、百合亜ちゃんの姉意識が普通のきょうだい以上に過剰なものだったし。
俺は俺の生活、百合亜ちゃんは百合亜ちゃんの生活。
お互いのプライベートに道路の白線のような太い線を引いて、干渉し合わないことが中学くらいからの暗黙のルールだ。
俺自身そんな関係がすごく楽だし、百合亜ちゃんもそうであろう。
お互い何かと目立つから、噂は色々耳に入って来るんだけどね。
だから、まるで別れた元カノに見つかったようなそんな気まずい気分だった。
知ってか知らずか、百合亜ちゃんは家では絶対に見られないような猫かぶり微笑みを浮かべる。
「最近クラスの子が騒いでたのよ。放課後まりや君が図書館にいるーって」
「…そう」
「絶対有り得ないと思って見に来たら、本当に居たから吃驚した」
「…それは、ご足労かけました」
はははっと笑いかけると、百合亜ちゃんもふふふっと上品に笑った。
…こわい、こわいよ…百合亜ちゃんその顔。
今日の悪夢に出て来ちゃうよ…。
「で、何してるの?まさかあんたが図書委員の子と付き合ってる…とかじゃないよね」
「…碧生を待ってる」
「は」
「少し前に碧生と一緒に帰るって約束したの。だから、毎日待ってる」
「そう、なんだ」
「だから今日も帰り遅いから。母さんに言っといて」
「…あんたら、本当に最近仲良いんだね」
「うん」
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