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第40話

 なんでって、聞きたいのは俺の方。  なんで、碧生が怒るの。  でも、その言葉は乱れた呼吸のせいで吐き出すことが叶わなかった。  碧生が、先に口を開く。 「…毬也は最近おかしい」 「……、…おかしい?」 「うん」 「どこが?」 「…全部」 「…」 「……ヤス君と遊びに行かない」 「…うん」 「図書館に居る」 「…それは」 「彼女作らない」 「…」 「……俺ばかり」  瞬き一つせずに俺を睨み付けていた碧生は、口を閉じ、肩に置かれたままの手を見つめた。  長い睫毛を何度か揺らして、頭の中の言葉を整理しているように眼鏡を触る。  その目が俺の顔へ戻って来たのは、多分1分後くらい。    でもその顔は、たったの1分でがらりと変わっていた。  さっきまでの怒りは嘘のよう。  不安げな瞳。  今にも泣きそうな。  落ち着きを取り戻し始めていた心臓が、どくんっと大きく跳ねる。 「…毬也、無理してる」 「…無理?」 「……俺が傍に居ると、毬也は無理している」 「…」 「いつもの、毬也じゃない」

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