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第41話

 そんなことない。  違うよ、碧生。  俺が、碧生と一緒に居たい。  俺が、碧生を待ってるの。  …そういえば、本心を俺は一度も伝えていなかった。  肩にあった手を、ゆっくり頭へ移動する。  柔らかい髪の毛をふあふあ撫でていると、泣きそうだった碧生が恥ずかしそうに下唇を噛んだ。  かわいい、碧生。 「違うよ、碧生。それは勘違い」 「…え?」 「無理なんかしてない。俺が碧生と一緒に居たいの」 「………、嘘」 「本当。俺、碧生と離れたくない」  俺の言葉に、碧生は一瞬で顔を真っ赤に染めた。  夕闇でも、はっきり分かるほど。  そぉっと手を頬へ移動させると、想像以上に熱い体温が指から伝わった。  …キス、したいな。  ……?  えっ、俺、今…何を考えて。 「…毬也?」  不意に思い浮かんだ自分の気持ちに、動揺が全身を駆け巡る。  待って、待って。  碧生は男だし。幼馴染で大切なひとだけど、俺と同じ男だし。  男にキスしたいとか、俺、おかしい。  でも、本気でしたいとか思ってるし。  抱き締めたいとか思っちゃってるし。  な、なんなの、俺。

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