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第44話

 あははっと三人で笑い合ったけど、碧生は付いて来れないようでオドオドと視線を揺らしていた。  そんな碧生は普段通りで、いつもは俺が手を差し伸べるんだけど。  …あの日。  キスをしたいと思ってしまったあの日から、俺はやっぱりちょっとおかしかった。  妙に、意識しちゃうというか、目が合わせられない。  二人きりでなくても、やっぱりキスしたいとか思ってしまう。  …同じ空間に居るってだけで、無抵抗にドキドキするからもうどうしていいのかわからない。  むしろ、周りの目を意識しなくていい分二人で帰ってる時の方が安心出来るというか。  駄目だと解っているから、周りに人が居るときは出来るだけ距離を取って…。  この訳分からない感情をこいつらに知られないよう、立ち回ることでいっぱいいっぱいだった。  碧生も、多分気付いているだろう。  二人の時と、みんなが居る時の俺のギャップに。  だから、絶対に碧生から話しかけてくることはなかった。  時々、窺う様な目で俺の顔を見つめている。  それはもちろんわかっていたけど、話しかける余裕すらなかった。 「そういやさー、」  ヤスがにやりと碧生に笑いかける。 「ひのっち、A組の上田さんにコクられたんだてぇー?」  え。  声は出なかった。  その代わりに、反応するように上半身を起こす。  碧生は少し驚いたように目を丸くした。  肯定。  表情を見ただけで、すぐにわかった。  …何それ。  俺、知らないけど。

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